NTT東西の光回線のインターネット接続は、昔はISP業者が提供する[PPPoE]だけでしたが、最近はVDE業者が提供する[IPoE]が登場し複雑になってしまいました。
しかもISP業者のWebサイトの説明を見ても、その業者が利用している[IPoE]の説明しかなく、[PPPoE]と[IPoE]の全体像がどうなっているのか?の把握もできなくなり、誤った記述も多々見受けられます。
例えば「PPPoEがIPv4通信でIPoEがIPv6通信なので早い」等の記述を見かけますがこれは間違いです。
[PPPoE]でもIPv6通信はできますし「IPoEにユーザが多く移行してしまった結果、PPPoEの方が早くなってしまった」との事象も今後は起こってくると思います。
[PPPoE]と[IPoE]の違いは
・[IPoE]の通信プロトコルの方がユーザ認証プロセスがない分、通信効率が良い。
・[IPoE]の方がユーザを収容する大規模設備が利用できる。
だけで[IPoE]でもユーザが集まり過ぎると設備を増強しない限り一人当たりに提供できる回線速度は低下します。
そこでこの記事ではISP側から見るのでなくNTT側の歴史から見る事により、[PPPoE通信]と[IPoE通信]の違いと、インターネット接続後の回線スピード計測に関する注意点を解説していきます。
目次 |
1.PPPoE,IPoEの歴史
PPPoEとIPoEの違いは何か?ISPとVNEの違いは何か?を説明しています。 PPPoEとIPoE、IPv4とIPv6の違いをまとめました。 自宅内のネットワークと回線のスピード計測の注意点を説明しています。 |
1.PPPoE,IPoEの歴史
下記の情報は東日本電信電話株式会社の下記URLの資料をベースに他の情報を加えてまとめ直した資料になります。
https://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No70/NL70_0800.pdf
昔はIPv4のアドレス空間しかなかった為、自宅のHGW/BBRとISP業者のインターネット設備を「IPv4 PPPoE」方式を使って接続していました。下図を参考に用語を理解して下さい。
HGW:Home GateWayの略
NTTのひかり電話を利用する時にNTTから貸し出される機器で、インターネットとの接続はこの機器の設定で行います。 BBR:Broad Band Routerの略 NTTの光電話を利用しない時はNTTから光回線の終端装置(ONU)が貸し出されます。 この機器ではインターネット接続ができないのでユーザはONUの後ろにBBRを設置し、この機器の設定でインターネットと接続します。 ISP:Internet Service Providerの略 インターネット接続サービスを提供している事業者でNTTの光回線とインターネットを接続する機器を管理しています。 PPPoE方式 自宅のHGW/BBRとISPのインターネット設備をPPP(Point-to-Point Protocol)で接続します。 一般的には「トンネル接続方式」と呼ばれています。 この接続は常時接続で無いため、通信のたびにIDとパスワード認証が発生する為に動画再生では設備負荷が高くなり、特に夜間の通信寸断はこれが原因と言われています。 |
2011年、NTT東西は今後増えてくるIPv6のアドレス空間に対応する為に下記の2つのアクセス方式を開発し提供を開始しました。
1.IPv6 PPPoE方式
この方式はNTTが推奨した接続方式で、従来通りISPの設備でインターネットと接続します。
下図の様にPPPoEでもIPv6通信はできるという事です。
IPv4 PPPoEを拡張した方式で自宅のHGW/BBRとISPのインタネット設備をIPv6でPPP(Point-to-Point Protocol)で接続する方式で、これを提供するのはISP業者になります。
よってユーザから見ると1つのHGW/BBRでIPv4網とIPv6網のアクセスが可能となります。
しかしこの接続方式を提供しているISPは下記しかなく、現在では主流でなくなりました。 ・@TCOM光、・IIJmio光、・hi-ho光、・OCN光、・So-net光、・ぷらら光等 |
2.IPv6 IPoE方式
この方式は一部の事業者から要望があった接続方式をNTTが採用したものですが、NTTの設備の関係から総てのISP業者に提供ができない為、当初は4社のVNE業者、現在は16社のVNE業者だけに提供する接続方式となりました。
このIPoE通信は、PPPoEの様に通信パケット毎に発生する認証処理がないので通信速度が安定する事からIPv6 PPPoEを提供しているISPもこのIPoEも併用提供する様になりインターネット接続の主流となりました。提供形態は下図と解説を参照して下さい。
この方式は一部の事業者から要望があった接続方式でIPv6対応ルータとインターネットをIPv6で直接接続する方式で「ネイティブ方式」と呼ばれ、これを提供するのはVNE業者になります。
しかしこれだけではインターネットの主流であるIPv4網へのアクセスができません。 そこでIPv4網へのアクセスは、IPv4通信をIPv6でカプセル化する「IPv4 over IPv6」を利用する事によりIPoE方式でもIPv4網とIPv6網へのアクセスが可能となりました。
ISP業者は数百社ありますが、このVNE業者はNTTの設備の関係から現在16社に限定されている為、ISP業者は左図の様に自社設備のIPv4 PPPoEと、自社が契約したVNE業者のIPoEのローミングサービスを提供するのが主流となりました。 |
一方、この「IPv4 over IPv6」の方式にはMAP-EやDS-Liteなどの複数の規格があり、どの規格を採用するかはVNE業者が決めています。
またIPS業者毎にどのVNE業者のどのメニュを契約するかが異なる為に、同じVNE業者使っているISP業者のメニュは同じと言えない複雑さが発生しました。
主要なVNE業者
VNE:Virtual Network Enablerの略
各VNE業者がどの様なメニュを持っているか?は、リンク先を見て下さい。但し、各ISPがどの様な契約を行っているかは判りません。
IPv4 over IPv6 規格 |
VNE業者名 | 解説 |
MAP-E | v6プラス | 株式会社JPIXが提供しているIPoEサービス。
GMOとくとくBB、So-net光プラス、en光、おてがる光が利用している。 IPv6対応ルータの設定は「V6プラス」で指定します。 |
IPv6オプション | BIGLOBEが「v6プラス」互換商品として開発したIPoEサービス。
IPv6対応ルータの設定は「V6プラス」で指定します。 |
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OCNバーチャルコネクト | NTTコミュニケーションズ株式会社が提供しているIPoEサービス。
V6アルファとも呼ばれる。 OCN、plala、@nifty等で利用しているがサービス名が異なる IPv6対応ルータの設定は「OCNバーチャルコネクト」で指定します。 |
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DS-Lite | Transix | インターネットマルチフィード株式会社が提供しているIPoEサービス。
IIJ mioひかり、ZOOT NATIVE、excite MEC光、BB.excite光 Fit、BB.exciteコネクト IPoE接続プラン等で利用している。 回線事業者によっては[DS-Lite]と呼ぶ事があります。 IPv6対応ルータの設定は「Transix」で指定します。 |
クロスパス
(Xpass) |
アルテリア・ネットワークス株式会社が提供しているIPoEサービス。
楽天光、en光等が利用している ルータの設定は「クロスパス」で指定しますが、対応しているルータの機種は少ない |
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v6コネクト | 株式会社朝日ネットが提供しているIPoEサービス。
朝日ネットが利用している。 ルータの設定は「v6コネクト」で指定しますが、対応しているルータの機種は少ない |
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4rd/SAM | IPv6高速ハイブリッド
(BBIX) |
BBIX株式会社が提供しているIPoEサービス。
ソフトバンクが利用しているが一般ルータでは対応してない。 |
・MAP-E :Mapping of Address and Port with Encapsulationの略,RFC 7597
・DS-Lite:Dual-Stack Liteの略, RFC6333
2.PPPoEとIPoE通信のまとめと併用
インターネットのアドレス空間にはIPv4網(IPv4アドレスを持つサーバ群)と、IPv6網(IPv6アドレスを持つサーバ群)があります。
メモ
IPv4アドレスとは
IPアドレスを32ビットのデータとして表現します。
表記方法は32ビットを8ビットごとにピリオド(.)で区切り10進数に変換して表しています。
例)192.168.1.1
インターネット通信はISPから割り振られたグローバルIPアドレスを利用して通信します。
[ブラウザでのアクセス方法]
http://IPv4アドレス:ポート番号
IPv6アドレスとは
IPアドレスを128ビットのデータとして表現します。
表記方法は128ビットを16ビットごとにコロン(:)で区切り16進数で表しています。
例)2408:212:867:b400:211:32ff:fea2:ae18
インターネット通信はVNEから割り振られたIPアドレスを利用して通信します。
[ブラウザでのアクセス方法]
http://[IPv6アドレス]:ポート番号
※IPv6アドレスを[]で囲む事がポイント
IPv4網やIPv6網への接続方式にはPPPoEとIPoEがあります。
メモ
PPPoE
HGW/BBRのPPPoE設定でISPと接続する事により、IPv4網とIPv6網にアクセスします。
IPoE
IPoE対応HGW/HGW+IPoE対応ルータ/BBR+IPoE対応ルータで各ISPが契約しているVNEと接続する。
IPv6網へのアクセスはIPv6 IPoEだがIPv4網へのアクセスは各VNEが提供するIPv4 over IPv6でアクセスする。又、IPv4 over IPv6の方式には[MAP-E方式]と[DS-Lite方式]がありVNE業者によって使っているアクセス方式が異なる。
[MAP-E方式]
自宅のIPoEルータにVNE業者のグローバルIPが割り振られ、インターネットアクセスの為のNAT変換を自宅ルータ側で行う方式。
[DS-Lite方式]
自宅のIPoEルータにVNE業者のグローバルIPは割り振られなく、インターネットアクセスの為のNAT変換はVNE業者側の設備で行う方式。
現在の主流はIPoE方式で自宅からインターネットアクセスだけならば、この接続方式を利用するだけで問題がありません。
しかし自宅からのインターネットアクセスに加え、インターネットから自宅のサーバ等へのアクセスがある場合はIPoE接続だけでなくPPPoEも併用利用する必要があります。
自宅からインターネットアクセス | IPoE |
インターネットから自宅へのアクセス | PPPoE |
これを併用方式と呼びます。
しかしISPのよってはIPoEを利用するとPPPoEのアカウントを無効にするISP業者もあるのでISPの選択には注意が必要となっています。
もし併用を許さないISP業者の場合は、IPoEオプションを無効にしてPPPoEだけで接続するしかないのですが、最近は一般ユーザがどんどんIPoEに移行してくれた為にPPPoEの設備に余裕が生まれ「PPPoEはそんなに遅くない」というのが現状になりつつあります。
具体的は接続事例は【無線LAN】でIPoE(v6プラス)とPPPoEを併用利用する方法を参照して下さい。